知らないうちに9月だ。
教員だった頃は新学期が始まるので、いやでもその到来を意識させられたのものだ。
8月31日と9月1日では天と地の差があったものだが、急に涼しくなるわけでもなし、本当は同じようなものなのだ。
さて、でも夏休みの終わりは9月1日と心に刻み込まれていたけれど、冬休みと春休みについては、何となく曖昧だった。
正月中「あれっ休みっていつまでだったろう」となどと不安になって、予定表を確認することが、時々あったような気がする。
で、この時期になると1人の生徒のことを思い出す。
3学期の始業式の日のことだ。
だいたい学期初日は、式のあと通知表を回収して終わりになるのだが、文化部としてはまれに見る熱心さだったわが美術部は、当然部活を行った。
美術室に集まったメンバーたち、なかには休み中あまり顔を見せなかった奴もいて、顧問としてはちょっと気合いを入れてやろうなどと思うわけである。
というわけで、集合したメンバーを見渡すと、いつも熱心で、休みの間も皆勤していたHの姿がない。
「あいつはどうしたんだ? 」と聞くと、同じクラスの部員が、「今日は休みでした」という。
「そうか、風邪でもひいたかな。・・・じゃ、今学期の予定についてだなぁ」などと話出したときだった。
「先生。Hが来ます」
確かに校門を入ってくる彼の姿が見える。
美術室は一階にあり、外側から直接入れるので、彼は休み中同様、まっすぐに美術室にやってきた。
H 「あっおはようございます」
わたし 「おぅ、今日はどうした?」
「どうしたって・・・?」
「午前中休んだんだろ」
「えっ・・・」
「体調悪かったのか? 部活だけ出ようなんていい根性だ」
「いや」
「ちがうのか・・・」
彼は始業式の日程を忘れていたのだ。
そして、いつものとおり、部活をやるために、午後から登校してきたのだった。
「なんだか、いつもと違って人がいっぱいいるなと思ったんですが・・」
始業式後、どっと家路に向かう生徒達に、逆行するように校門に入ってきた彼は、それでもわたしにいわれるまで、ことに気付かなかったという。
とぼけたやつだったなぁ。今どうしているんだろうか?
2006/10/6